中村英夫 名誉教授 WCTR-Dupuit賞を受賞
さる7月3日から8日までトルコ・イスタンブールにて第10回世界交通学会(WCTR)が開催され,同学会の最高位の賞であるDupuit賞が中村英夫名誉教授に授与された.同賞は交通研究・交通政策の分野において顕著な功績があり,長年にわたって指導的な立場から貢献した研究者に授与されるものである.(同賞は過去に二名の研究者に授与されているが,今回の受賞はアジア地域からは初めての受賞である.)また,同賞はNavierらとともに19世紀フランスの土木大学校で教授を務めた土木技術者Jules Dupuit(1804-66)にちなんでいる.Dupuitは当時あった厳しい土木事業批判の中で,公共事業の社会的便益の科学的な推定法を開発し,政策の費用対効果分析の基礎を築いたとして現在の公共経済学においても高く評価されている.工学の基盤を持ちながら社会科学・政策科学にも貢献したことから,同学会の学際性を象徴するものとしてこの賞に名前が冠されている.
受賞理由には,中村名誉教授が取り組んできた(写真測量を応用した高速道路線形設計や土地利用交通相互作用モデルなどの)多数の業績と並んで,公共事業の科学的評価手法の開発とその社会的普及に関する貢献が挙げられている.わが国における近年の厳しい土木事業批判の中でDupuitと同様の貢献をなしたことが同賞にまさに最もふさわしいと評価されていると言える.授賞式は荘厳な19世紀ロココ調のDolmabahce宮殿の庭園でGala Dinnerの機会に厳かにかつ華やかに盛大に行われた.アジアと欧州の交通結節点の歴史を持つイスタンブールの地で,交通分野の世界的な学術交流に指導的役割を果たした中村名誉教授がこの栄誉ある賞を受賞されたことを心から喜びたい.
上田孝行教授記
東京大学大学院工学系研究科HPより
中村名誉教授による受賞スピーチ