藤野陽三教授・長山智則助教が米国ASCE賞(2007 Raymond C. Reese Research Prize)を受賞

 社会基盤学専攻の藤野陽三教授と長山智則助教が,この度2007年ASCE(米国土木学会)賞のRaymond C. Reese Research Prizeを受賞された。2005年10月に構造工学論文集(Journal of Structural Engineering)に掲載された論文「Structural Identification of Nonproportionally Damped Systems and its Application to a Full-Scale Suspension Bridge」が評価され,本賞の受賞となった。

 Raymond C. Reese Research Prizeは1970年4月にASCE名誉会員Raymond C. Reeseにより創設され,構造工学の分野で著しい業績を挙げられた研究者に送られるASCEの権威ある賞である。毎年構造工学論文集に掲載された論文から最も優れた論文1編が選ばれる。本賞は,国籍はもとより ASCEの会員であるかどうかも問わない非常にオープンな賞であり,日本人としては初の受賞となる。

 受賞論文は,供用中の吊橋の風による常時微動を密に測った初めての例であり,土木構造物のモニタリングに適した形で理論体系を構築するとともに,その有用性を供用中の橋で検証し,橋のモニタリングの先鞭をつけた研究と言える。本論文は多点の常時微動モニタリングデータから高次振動モードの同定や近接モードの分離に成功し,振動特性に影響を与える物理現象や構造特性を明らかにした。また本論文ではいろいろな風速下における常時微動データから非定常空気力の影響の検出に成功し,風洞試験結果と整合することを示したのも世界で初めてであり,耐風工学上,極めて価値の高い研究である。本論文は官と学が協同した研究であり,アメリカではあまり例がなく,この点も受賞の理由の一つになっている。

 平成19年5月17~19日,Long Beachで開催された2007年構造会議(Structures Congress)において,ASCE賞の受賞式が行われた。