学生からみた社会基盤学科
2019

新学部4年生と修士1年生に、受講した講義・演習や卒業論文の経験、社会基盤に進学したきっかけや学科/専攻の雰囲気などについて語ってもらいました。
知花(准教授):今日は皆さんお集まりいただきありがとうございます。新四年生は、社会基盤の授業カリキュラムを終えて、卒業論文のグループに配属されたところだと思います。早速だけど、昨年度受講した授業の感想や、社会基盤のカリキュラムの特徴だと思ったことを聞かせてもらえるかな?
石川(B4):まずは、必修が少なく、履修の自由度が高いことですね。単に自分の興味のある科目を取れるということだけではなくて、同じ学科で同じ時間を過ごしてきているのに、学んでいることに個性が出てくるというのも魅力だと思います 。
西條(M1):興味関心は違いつつ、同じ志を持った仲間同士で高めあえる環境だよね。
石川:はい。同期には本当に恵まれていると思います。それから、座学だけではなく、学んだことを演習するプロジェクト系の授業も多く、バランスが取れていることも特徴だと思います。しかも、プロジェクト系の授業は、基本的にグループワークが求められ、仲間とコミュニケーションをとりながらやらなければならないように設計されているので、工学的知識だけでなくマネジメント力や想像力も養われたと思います。
米澤(M1):特に印象に残っている演習はある?
石原(B4):私は山中湖の演習林で行われたフィールド演習(社会基盤学科唯一の必修科目)が印象に残っています。すべてのグループが同じ課題を与えられているはずなのに、グループによって視点が違ったり、自分のグループの中でも、学生同士や先生も交えた議論を通じて、アイディアが改善するのが見えたりして楽しかったです。
石川:座学やプロジェクト演習系の授業では横のつながりが強くなりますが、少人数セミナーでは先輩とつながりができるのがよかったですね。縦のつながりもできることで、研究室選択にも役立ちました。
知花:そういえば、海外を対象にした少人数セミナーもあって、海外行く機会もずいぶん増えたね。
米澤:私は海外インターンシップでチェコの大学に一か月行ってきました。私は洪水対策の話に興味があったので、日本とチェコの比較をすることにしたのですが、受け入れてくれたコンクリートがご専門の先生が、関連する研究をされている先生を5-6人紹介してくださり、お話を聞きに行くことができました。大学だけではなく、市役所や実際の川も見て回ることができ、非常に充実していました。
渡邉:たった一か月でそんなにいろいろできたの?
米澤:はい。自分から動くと、多くをつかむことができるということに気づきを得た一か月間でした。ただ困っていても何もはじまらないので、自分からわからないことがあったら聞くとか、積極的に動くのが大事だなと思うようになったことは大きいと思います。
石川:先輩方は卒業論文に取り組まれたと思うのですが、一年間どうでしたか?
米澤:私はGPSのデータとWi-Fiのデータを統合して人の滞在と移動を同時に捉える研究を行いました。それぞれのデータには一長一短があって、見かけほどその統合は簡単ではありませんでした。はじめは何をやっていいかわからなかったのですが、むしろそこが研究の難しくも楽しいところで、それを乗り越えたら自信にもつながりました。
知花:卒業論文の附録に収録してあるけど、英語でペーパーも書いたのかな。
米澤:はい。学術論文として公刊するところまでが研究だということでご指導いただきました。卒業論文の提出後もやらなければならなかったので大変でしたが、そこまでやらせてもらう機会をいただいたのはありがたかったです。
西條:僕は大型の3Dプリンターを使って、コンクリートを一層ずつ積み重ねて建物などの構造物つくる技術について研究をしました。一時間程度でかたまってしまうコンクリートを素早く正確に積み上げていく必要があるのでマネジメント能力も必要でした。実験において1時間でどこまでコンクリートを打つか、といった計画力や、実際に実験を始めてみて、どうしても思っていることと違うことが起きてしまったときに瞬時に求められる判断力が鍛えられたと思います。それから、研究の経験を通じて、今では道路や構造物の材料は何かと考えるようになったり、身近な生活を支えているものに対する意識が高まりましたね。
渡邉:進学したときはあまり意識していなかった?
西條:はい、進学したときはコンクリ研に入るとは思ってもみませんでした(笑)。でも今はとても楽しんでいます。
石川:僕はもともと計画系のことをやりたいと思って進学したのですが、研究室選択は水圏グループにしました。社会基盤のカリキュラムには「良い意味で」裏切られたと思います。こんなにコンクリート練るの?とか、川に入っていって流速はかるの?とか(笑)。現場で学ぶというのは社会基盤の特徴だと思いますが、やっぱりやってみると結構楽しいですね。
石原:私はもともと「土木」がやりたくて入ったのですが、周りにもっといろいろな興味を持っている人がいてびっくりしました。自分の地元について自分より詳しい同期とか。今では、周りから刺激を受けて、自分がやりたいと思っていた土木が狭かったように感じています。
渡邉:基軸は土木だが、周りの影響を受けて関心が広がったんだね。米澤さんはどうですか。
米澤:私は駒場の「社会システム工学基礎」の授業を受けてですね。それまでは社会基盤のことを認識もしていなかったのですが、授業を受けて、こんなに「人」のことを考えている工学ってあるんだ、と驚いたことを覚えています。それから、社会基盤に行きたいと思い、駒場の授業をちゃんと頑張るようになりました。あの授業は迷ったらぜひ受けた方がいいと思います。
知花:「人」はもちろんだけど、社会基盤のもう一つの軸となるのは「自然」で、例えば川とか海とか、地盤・斜面とか、これはもしかすると他学科との違いかもしれないね。人がいないところも研究する。他には社会基盤の重要な特徴はあるかな?
石川:社会基盤で取り扱う対象のスケールの多様性も特徴の一つだと思います。国際社会からコミュニティまで、様々なスケールの研究対象がある。
西條:空間だけではなく時間軸もそうだよね。何十年、何百年、何千年のスケールで考えることが求められる。対象のスケールがいろいろあるからこそ、学生から見ると、社会のために貢献したいと思っている人であれば、進学後に自分の道を見つけていくことができると思います。なにより、研究のことや進路のことを考えるうえでも、いろいろな人からのフィードバックが必要だけど、同期とはもちろん、先生方とのこういう場でも楽しく話せるし、距離が近い雰囲気がいいです。
知花:教員としても、上意下達ではなく、一緒に研究する仲間として認識しているからね。
渡邉:社会相手にどういう研究をしていくか、どう社会に役立たせるかを考えていて、当然若い人たちも含めて社会の構成員であるため、一緒に研究をするという意識でやっています。こういう距離感の近さは、昔からあったと思うし、今後とも大切にしていきたいと思うので皆さんよろしくお願いします。