学生からみた社会基盤学科
2015

社会基盤に入ってからの生活を、学生の皆さんに振り返ってもらいました。
神谷(D1):社会基盤には海外インターンシップがカリキュラムとして用意されていますが、実際にどんな経験をしましたか?
庄司(B4):僕は社会基盤学科の紹介で、ハノイに1ヶ月間、JICAの開発コンサルタントの専門職プログラムに参加しました。そこでは実際に都市高速鉄道プロジェクトについて学べたと共に、世界銀行や商社、ゼネコンなどさまざまな関係機関と協力して開発コンサルタントが業務を進めていく様を体験できました。たくさんのステークホルダーのヒアリングを行って、指導を受けながら渋滞緩和策を考えるといったことに取り組んだわけですが、座学と違い、自分で課題発見から出来るのが面白かったです。1カ月は短かったですね。
神谷:実際の都市計画に関われる機会はそうないから、その経験はとても貴重だよね。基礎プロジェクトⅠでは都市計画演習を行っているけれど、どんなことが印象に残っている?
三木(B4):通年という長いスパンで清水市の都市計画に取り組めたことが良かったですね。夏学期は対象敷地の空間計画を考えて、冬学期には個々のチームの敷地計画を重ね合わせていく作業をみんなで取り組みました。私自身はアクセスの悪い農村を都市部とどうやって結びつけるかを考えました。演習を通じて一番勉強になったことは、現地の人に話を聞けたことな気がします。例えば子どもの頃からそこで生まれ育った現地の方は数キロ歩くことを不便とは感じていなくて、そこには私たちとの認識の差があったんです。私たちにとって良い事は必ずしも地元の人たちにとっても良い事という単純な話ではないことが分かりました。
前田(B4):私は市街地を担当して、年配の方が使っている空間と若い人が使う空間につながりを生み出すような計画を考えました。でも実際の街での行動は完結しているから便利という地元の人の意見もあって、空間に対する捉え方の違いが現地の人たちの間にもあることを本当に実感しました。
三木:都市の4要素である住む、働く、憩う、移動する、をいかに両立させるかが大切だと感じました。
前田:あと、自分に欠けている視点をグループワークや講評で指摘され修正していく、そういうプロセスが必要だと感じました。最後に出来たプランのクオリティは大きく向上していて、自分ひとりだけだと難しかったように思います。
神谷:たしかに、仲間と議論を交し合って良いものを作り上げていく過程も演習の特徴だね。プロジェクト型演習で他には何が印象に残っている?
庄司:僕は応用プロジェクトⅣですね。一見するとすぐに折れてしまいそうなパスタで、構造解析や材料特性の分析を通じて丈夫な橋を作るという演習です。計算するだけではなく、実際にそれを現場で作って試すのは社会基盤ならではだと思いましたね。ただ、分析した通りに結果が帰ってくるわけではなく、たとえば糊の量で誤差がでてきてしまうなど、難しいながらもすごく面白かったです。
三木:私は、チームを組んでコンクリート会社を立ち上げ、実際に作ったコンクリートを商品として模擬入札を行う基礎プロジェクトⅡですね。同じ配合でも作成過程によって出来上がりは違ってしまったり、論文を読んでいても骨材の微妙な調整が必要だったりと、コンクリの繊細さが感じられておもしろかったです。
前田:演習前はコンクリートなんて…、と思っていたけど、演習後にはコンクリのひび割れをついつい見てしまったり(笑)。社会基盤は地味なものも多いけれど、街を歩いていてインフラのかっこよさに気づけるようになった気がします。
それと、演習を通して,社基にいる人たちはみんな自分で考える力に優れていると思いました。自分が頑張ったと思ったことを、超えてくる人たちがたくさんいて。行動力があって、打ち込むエネルギーをものすごく感じました。研究もそうですが、答えがない問題に対して自分が納得できるまで取り組んでいるなと感じました。
神谷:いわゆる「知的体力」というのは研究を行う上では非常に重要だね。特に大学院では、研究に打ち込むためにも大切なこと。総長の言葉を引用すれば、「知のプロフェッショナルになる」ということかな。教授が知らないことを知るようになれとよく言われています。自分の行っていることが正しいのか不安になることもあるけど、それでもそういう場面を乗り越えられた時は研究を大学院で続けていてよかったなと思います。また、大学院の講義は基本的に英語でやっていて半分以上は留学生だという点も刺激があるよ。
最後に、社会基盤の特徴をそれぞれ聞かせてください。
三木:社会基盤は、先生の専門が多岐にわたっているのが特徴ではないでしょうか。水、土、河川、学科に入ってもいろんなものの見方がある。自分の中で見方を固めてツールが与えられる学科が多い中で、国土、都市、地域についていろんなものの見方を身に付けられるような気がします。
庄司:僕は、社会に役立つことをやっているのが、まさしく社会基盤の一番の特徴だと思います。インフラには普段気づかれないけど、役に立つこと、そういうことがあるんだとだんだん分かってきたような気がします。
前田:社会に役立てるツールを提示する際に、本当に役立つのか、誰のためになるのか、人々にとっていいことなのか、それらの根拠付けが必要になってくるのが社会基盤の特徴に思います。