社会基盤学科
卒業生

様々な分野の第一線で活躍する卒業生に、社会基盤学科に進学した理由や学科で学んだこと、現在の仕事との関わりなどについてお聞きしました。
  • Q1 そもそもなぜ社会基盤学科(専攻)に入ろうと思ったのですか?
  • Q2 お仕事を選んだきっかけは何でしょうか?
  • Q3 今のお仕事とインフラとはどのような関わりがありますか?
    (どんな仕事をしていますか?社会基盤との関わりは進路選択に影響がありましたか?)

2022年時インタビュー

鳩野 美佐子
広島大学
鳩野 美佐子
水圏G・芳村研 <2013年卒業,2015年修士修了,2018年博士修了>
  • Q1:小さいころからモノ作りが好きで工学部に行くだろうとだけ漠然と決めていた大学入学時には社会基盤に進学するとは全く考えていませんでしたが、進学振り分けを機に色んな学科の説明を聞き、一番面白そうだったので選びました。結果的に利用しませんでしたが、海外インターンシップ制度もとても魅力的でした。
  • Q2:研究室配属されて卒論で取り組んだ研究にとてもやりがいを感じ、研究職を目指そうと思い博士課程に進学しました。元々教育にも興味があったので、博士修了後は東北大学やヒューストン大学での研究生活を経て、大学教員の道を選びました。
  • Q3:現在は広島大学の社会基盤環境工学プログラムで助教として、東京大学の社会基盤学科で学んだことを基に学生指導や研究を行っています。学生時代から主に全球スケールでの河川を通じた水や土砂の動きについて研究していますが、広島に来て中国地方の関係省庁との関わりも増えたので、地域への貢献も目指して研究の幅を広げていきたいと考えています。
遠藤 礼子
Biobot Analytics., Inc.
遠藤 礼子
国際プロジェクト研究室 <2011年卒業>
※マサチューセッツ工科大学にて、2014年に修士、2017年に博士を修了
  • Q1:もともとは農学の視点から途上国支援をできればと考えていましたが、水道、道路などの社会インフラの整備といった視点からも途上国支援ができる可能性に気づき、社会基盤学科に入ろうと思いました。技術開発そのものより、利用可能な技術をいかに社会インフラ、生活に普及するかという、より人々に近いアプローチが好きだったのだと思います。
  • Q2:海外留学(MIT)後、米国ボストンベースのスタートアップに1人目の社員をして入社しました。もともと国際機関での就職を目指していたものの、アーリースタートアップで働くというユニークな機会に惹かれてしまいました。会社のミッションと創業者が魅力的であったことも大きな理由です。
  • Q3:下水疫学(下水サンプルを用いて、集団レベルでの新型コロナなどの疫学情報を解析する)という新しいツールを、疫学モニタリングのための基本的なインフラとして使えるようにすることをミッションに仕事をしています。各地に置かれた地震計により地震の早期警戒ができるように、様々な地域で下水解析を行うことにより、新たな感染症の侵入を早期に発見できたり、蔓延する感染症の動態をより正確に把握できるようになればと思っています。技術開発、ステークホルダーマネジメント、プロジェクトマネジメントなど、社会基盤で学んだ多くのことが今の仕事に活きていると思います。
楢崎 泰隆
浙江大学
楢崎 泰隆
橋梁研究室 <2013年卒業・2015年修了>
※イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校にて、2020年博士課程修了
  • Q1:進学先を選ぶ過程で、社会基盤学は大学で学ぶ学問と社会とのつながりが非常に強い分野であることを知り、興味を持ちました。特に、問題指向型の考え方で人それぞれ多様なアプローチを追求するところが自分にあっているように感じました。
  • Q2:社会とのつながりが特色の分野において、あえてアカデミアの道を選ぶのは大きな決断でした。ただ、「多様なアプローチ」の一つとして、学問的・技術的問題に対して、短期的な妥協案ではなく、多少時間がかかっても正面から技術でもって向かい合い、そのプロセスを次の世代の学生に生で見せるのが自分の役割であるように感じ、この道に飛び込むことにしました。
  • Q3:中国の浙江大学で助教授をしています。国や文化が違っても、インフラの重要性は全く変わりません。膨大なインフラ(私の場合は橋梁などの構造物)を効果的に維持管理するための技術を研究しています。特に、画像データ・AI・ロボットを活用して、データ取得からデータ処理に至るまでの構造物の点検・モニタリングのプロセス全体を自律的に行うことを目標にしています。まだ課題は多いのですが…

2021年時インタビュー

中堀 千嘉子
中日本高速道路株式会社
中堀 千嘉子
コンクリート研究室 <2011年卒業>
  • Q1:もともと公共に役立つ仕事がしたいと考えていました。また、旅行や街歩きが好きで、自分が普段暮らしている街や利用しているインフラについて学べる学科を選びました。
  • Q2:就職活動の時には、社会基盤学科で学んだことを生かしつつ、日々の生活を支えるインフラに関わる仕事がしたいと考えていました。お客様が利用する高速道路に、直接的に関わることができる今の会社を選びました。発注者として設計から施工、維持管理まで行い、さらにSAやPAの管理まで行っている、業務の幅広さも魅力でした。
  • Q3:中日本高速道路株式会社は、高速道路の新設・改築・維持・修繕などを行う会社です。部署によって関わる仕事は変わってきますが、会社全体として高速道路の安全・安心を目指しています。新規建設部署の時は中流動コンクリートを施工したり、管理部署の時にはコンクリートの劣化判定をしたり、私が経験した仕事の中には、学科で学んだことが関係することが多くありました。現在の所属部署では、スマートインターチェンジの費用便益分析などを行い、企画・調整を行っています。
前田 紘弥
株式会社アーバンエックステクノロジーズ
前田 紘弥
関本研究室 <2016年卒業・2018年修了・2021年論文博士取得>
  • Q1:小さい時から道路をはじめとして先人が築き上げてきたインフラを見るのが好きでした。特に、飛行機から見える街の景色にロマンを感じていました。駒場のガイダンスで社会基盤学科(専攻)に進学すれば、インフラを作ること、インフラを活用すること、インフラをマネジメントしていくことなどを学べると聞いて進学することを決めました。
  • Q2:学部4年から道路損傷を画像処理技術を駆使して自動検知するという研究を行なっていました。研究成果を論文としてまとめるだけでなく、実際の道路管理業務で使ってもらえるようにしたいと思い、会社を立ち上げました。
  • Q3:今の仕事では、都市空間のリアルタイムデジタルツインの構築によって都市の課題解決を目指しています。まずは道路路面のデジタル化ということで、道路損傷AIを行政向けに展開しています。社会基盤学専攻で研究を行う機会をいただいたからこそ持ち得た問題意識が今の仕事につながっているので、社会基盤学科・専攻に非常に感謝しています。今の仕事を通じて、社会基盤学専攻に恩返していきます。
山崎 明日香
国土交通省
山崎 明日香
景観研究室<2014年卒業> 海岸研究室<2016年修了>
  • Q1:進学振り分けのガイダンスの際、川にかかる真っ赤な橋の写真を見せ、土木の格好良さについて熱く語る先生がいらっしゃって、その先生のお話の面白さと熱意に惹かれて社会基盤学科に入ることを決めました。
  • Q2:社会基盤学科で出会った人達がとても素敵だったので、就職活動でも土木の業界に進もうというのは早くから決めていました。その中でも、防災とまちづくりというテーマで仕事に取り組めること、国土全体という俯瞰した視点で物事を考えることができることから、国家公務員の仕事を選びました。
  • Q3:国土交通省では、道路や河川、港湾など皆さんの暮らしを支える主要なインフラを自ら管理するほか、それらに係る制度づくりを行っています。激甚化・頻発化する災害、人口減少・高齢化社会の中での競争力の維持など深刻化する社会課題に対して、我々のやるべきことはまだまだ山積みだと思っています。私自身は今、データや新技術をまちづくりに生かすスマートシティの推進に取り組んでいますが、新たな仕事を生み出すにあたっては、土木のみならず、他省庁、地方公共団体、民間企業等いろいろな方と意見交換しながら進めており、それもこの仕事ならではの魅力だと思います。
永山 悟
陸前高田市
永山 悟
景観研究室 <2007年卒業・2009年修了>
  • Q1:スケールの大きなものづくりがしたかったからです。進学振り分けの頃、建築や社会基盤のガイダンス的な授業をいくつか取るなかで、景観研の授業では当時の篠原先生、内藤先生、中井先生がまちづくりの実践例を非常に刺激的に語っていて、「これだ!」と思い、景観研に進むべく社会基盤を選びました。
  • Q2:東日本大震災です。東京の都市計画コンサルタントに勤めていた頃に震災があり、千年に一度のこの災難に、たまたま自分はまちづくりを仕事にしているのだから、なんらか被災地のために働くべきだ、そして行くなら最前線だ、と思い、自治体職員を選びました。陸前高田は、内藤先生、羽藤先生から提案いただき、非常に大きな被害を受けているということもあり、飛び込んでみました。
  • Q3:まさに社会基盤そのものを扱う仕事をしています。壊滅的な被害を受けた陸前高田ではゼロからの復興まちづくりが進められていますが、都市計画、公園や施設整備、そして管理まで、ほぼすべてのまちづくりに関われることが、小規模な自治体職員の醍醐味だと思います。
鈴木 俊也
One Concern株式会社
鈴木 俊也
コンクリ研<2013年卒業> 桑野研<2015年修了>
  • Q1:公共に資する経済活動に興味があり、工学の中でも特に直接的に結びついている学科だと思ったからです。技術的観点から見ても海外からも高い評価を受けており、国際的なプロジェクトや取り組みについても学べる点にも魅力を感じました。
  • Q2:最初の就職先は政府系の金融機関でした。公共性と収益性の両立を掲げる企業で、社基に進学した時と同じような観点で就職しました。留学を経て日本を外から俯瞰できた経験も大きかったです。その後はより事業を創る側に回りたいと思い、エネルギーテックのスタートアップを経て、現在の会社に転職しています。
  • Q3:現在は防災×テクノロジーのスタートアップにて、事業開発を担当しています。まだ開発途上ではありますが、自治体や企業に対し、自然災害や気候変動による被害予測(橋梁、道路、電力網等のインフラへの影響も含む)を提供する事で、事前の備えを促したり、開示情報提供のサポートなどが行えると考えています。
山崎 寿史
日本工営株式会社
山崎 寿史
橋梁研究室 <2012年修了>
  • Q1:社会基盤学というその学問の対象のスケールの大きさやその先に見える社会貢献度の高さに惹かれました。また当時私は構造力学に興味を持っており、力という目に見えないものを可視化・数式化し現象を解き明かすということをもっと深く学んでみたいという思いもありました。
  • Q2:学生時代、多くの発展途上国をバックパックを背負って巡る中で、まだ社会インフラが十分に整備されていない都市を多く見てきました。そして、途上国を舞台にして、その国の方々と一緒にインフラ整備を通じて社会の発展に貢献したいと考えるようになりこの仕事を選びました。
  • Q3:私は今まで、インド、タイ、カンボジア、バングラデシュ、インドネシア等様々な国において、鉄道を建設するための計画、設計、入札支援、施工監理の業務に携わってきました。日々、相手国政府やプロジェクトチームメンバーと協議を行い、より良いインフラ整備を実現するために努力しています。インフラ整備を通じた社会貢献を肌で感じられる仕事だと思います。
山本 淳史
清水建設株式会社
山本 淳史
河川/流域環境研究室 <2014年卒業,2016年修了>
  • Q1:幼い頃から続けていたボーイスカウトや、大学から始めたオリエンテーリングや登山の影響で自然が好きになり、自然と向き合う学問をしてみたいと感じました。また、専門に尖るだけでなく 、学際的で一つの目的に対して様々な方向からアプローチしようとする学風に惹かれました。
  • Q2:社会基盤学科で学ぶうちに、我々の生活を守り、支えるインフラを整備することに使命感のようなものを感じるようになりました。選択肢は色々ありましたが、実際に自分の現場で物を作ること、着々と出来上がっていく物を毎日間近で見ていくことに勝る楽しさはないだろうという気持ちで選びました。
  • Q3:橋やダムや道路、鉄道などのインフラを作っています。現場勤務のときは発注者や協力業者の方々とコミュニケーションを取りながら安全・品質等に留意しつつ施工管理を行い、本社勤務になってからは現場で生じた技術的な課題を解決したり、総合評価型案件の入札に際して技術提案書の作成を行ったりしています。社会基盤学科でインフラの重要性を理解できたからこそ、誇りを持って今の仕事に取り組めていると思います。

2015年時インタビュー

窪島 智樹
東日本旅客鉄道株式会社
窪島 智樹
橋梁研究室<2005年卒業> / 景観研究室<2007年修了>
  • Q1:元々まちづくりや都市景観に興味があり、当時社会基盤にいたサークルの先輩の話や、駒場のガイダンスで、景観というのは建築・土木・都市計画の系統を超えて全体をマネジメントすることが重要だという話を聞き、こうした系統を横断的に学びたいと思ったことがきっかけでした。
  • Q2:社会基盤で学ぶ中で、構造物を作りあげる上での発注者側の技術者の役割の重要性を感じ、またインフラを支える仕事そのものにも魅力を感じていました。最終的に、発注者側の技術者としての業務の幅の広さ(計画から設計、施工まで関われること)と、首都圏の人々の生活を支えるという使命感の大きさで、今の会社を選びました。
  • Q3:文字通り社会基盤である鉄道の安全を支えることを経営の根幹としており、社会基盤学科の先輩方も数多く活躍しています。また現在当社は海外への鉄道インフラの輸出に関する業務に挑戦しようとしており、海外での仕事に興味のある人の活躍の場が広がりつつあります。
    なにより、人々の日常を支える仕事そのものに誇りを感じられるのは、社会基盤で学んだものにとって非常にありがたいことだと感じています。
恩賀 万理恵
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恩賀 万理恵
国際プロジェクト研究室(2008年卒業・2010年修了·2013年博士課程修了)
  • Q1:駒場の講義で、日本のみならず様々な社会を対象とした体験・研究活動の機会がありそうだと知ったことが、興味を持ったきっかけでした。当たり前ながら実社会に役に立つ工学を目指していると感じることができ、「公共に資する」という考え方に大きな魅力を感じました。
  • Q2:知人の紹介がきっかけですが、大学・大学院在学中、様々な研究および課外活動で、主に国際機関を含む公共セクターを対象としていて、民間でありながら公共政策に関わることのできる役割に興味を持ちました。
  • Q3:今の仕事では、ある意味新しいインフラ分野で、技術が社会で有効活用されるような環境を考え、発信しています。ですので、広い意味でこれまで研究でやっていたことや学んだこと、インフラとの繋がりが深いと考えています。また今後とも何かしらの形で、社会基盤に関わる、技術と社会の間を繋げるような役割を国際的に果たせて行ければと考えています。
葛野 高文
アジア開発銀行 エネルギー専門官
葛野 高文
景観研究室(1997年卒業·1999年修了)
  • Q1:都市やそれを構成するインフラの計画・設計を生業にしたいと考えたから。当時の社会基盤学科・専攻は「海外」を前面に出していませんでしたが、「途上国開発論」という講義で途上国をフィールドにすることを意識し始めました。
  • Q2:新卒で選んだ仕事はエンジニアリング・コンサルタントの仕事で、インフラの建設による人々の生活向上に直接的に関与したく、途上国開発の道を選びました。その後、フィールドでの経験を途上国開発の上流の計画や案件形成に活かしたく、アジア開発銀行に転職しました。
  • Q3:コンサルタント時代は水力発電や農村電化のプロジェクトに従事しており、計画・設計・施工管理をしていました。さらにハードに対する理解を元に、社会環境影響評価、経済財務分析、インフラ事業に付随する社会開発などのソフト分野の案件に携わりました。現職のアジア開発銀行では、ほぼ一貫してエネルギーセクターを担当しており、発電、送電、配電設備に対する融資を主に手がけています。
阿部 敦壽
財務省(現在総理大臣官邸に出向中)
阿部 敦壽
応用力学/岩盤力学研究室(2002卒業·2004年修了)
  • Q1:私の地元には横浜みなとみらい地区があり、港湾という貿易の拠点、商業施設、公園が一体となった空間に魅力を感じました。こうした空間の創出など、社会基盤学は人々の生活やアメニティ―向上に資する分野だと考えたからです。
  • Q2:日本のインフラ技術が、ODA等を通じて世界に貢献していることを学び、国として更なる貢献を目指すため、国家公務員を志望しました。また、社会技術という新たな研究に携わる中で、多様な価値観を俯瞰することの重要性を学び、インフラ整備も含め、多様なプロジェクトについて、予算等を通じて俯瞰的に考えることができる財務省を選びました。
  • Q3:現在は、財務省から総理大臣官邸に出向し、総理秘書官を補佐する仕事をしています。経済財政・社会保障・教育・農林水産業・インフラ整備など様々な政策に携わっており、学科で学んだとおり、多様な政策(=これが社会に必要だという価値観)を俯瞰することの重要性を実感しています。